ノバルティス ファーマ株式会社

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CL-304試験

ゾルゲンスマはCL-101試験、LT-001試験、CL-303試験、CL-304試験及びCL-102試験の成績に基づき承認された。参考として日本人症例3例を含む国際共同第Ⅲ相試験(CL-304試験)において、承認時までに得られている結果を示した(全例:2019年3月8日カットオフ、日本人症例:2019年9月2日カットオフ)。

    4)Ⅰ又はⅡ型SMA患者を対象とした国際共同第Ⅲ相試験
    〔CL-304試験:SPR1NT〕(日本人症例を含む)15)

    15)社内資料:遺伝子検査によりⅠ、Ⅱ又はⅢ型と考えられる脊髄性筋萎縮症患者を対象とした国際共同第Ⅲ相試験(CL-304試験)〔承認時参考資料(承認時に 評価された資料)〕

      1. 試験概要
  • 目  的
        臨床的な症状を発症前のⅠ又はⅡ型SMA患者に対するゾルゲンスマの有効性及び安全性をコホートごとに独立して検討する。
    対  象
        SMN1遺伝子の両アレル変異を有し、SMN2遺伝子のコピー数が2又は3で、臨床所見が発現しておらず、抗AAV9抗体を有さず、本品の投与日に6週齢以下で遺伝学的検査によりⅠ又はⅡ型と考えられるSMA患者 27例以上※1, 2
    ―登録基準―
    以下の基準をすべて満たす患者
    ● 臨床所見が発現していないSMN2遺伝子のコピー数が2のⅠ型SMA、コピー数が3のⅡ型SMAであること(c.859G>Cが認められる患者も登録可能とされた)
    ● 本品の投与日に6週齢以下であること
    ● 本品の投与前に嚥下機能検査により低濃度液体を飲み込む能力があること
    ● CMAPがベースライン時に2mV以上であること

    ※ 1 :試験開始時は、SMN2遺伝子コピー数が2、3又は4のⅠ、Ⅱ又はⅢ型SMA患者を登録対象としていたが、治験実施計画書改訂で、Ⅲ型SMA患者(SMN2遺伝子コピー数が4)は登録基準から削除された。

    ※2:登録未完了。データカットオフ時までにコホート1に8例、コホート2に9例の患者が登録された。

    方  法
        第Ⅲ相、多施設共同、国際共同、非盲検、単群、単回投与試験。ゾルゲンスマ1.1×1014vg/kgを30~60分かけて静脈内に単回投与した。AAVを用いた遺伝子補充療法に対する患者の免疫反応を減弱させる目的で、ゾルゲンスマを投与する24時間前から投与後少なくとも30日目までプレドニゾロン1mg/kg/日の予防投与を行った。ゾルゲンスマの投与後、SMN2遺伝子コピー数が2の患者は18ヵ月齢時まで、SMN2遺伝子コピー数が3の患者は24ヵ月齢時まで追跡調査した。有効性は、コホートごとに独立して評価した。
          コホート1:SMN2遺伝子コピー数が2のⅠ型SMA患者
          コホート2:SMN2遺伝子コピー数が3のⅡ型SMA患者
    試験デザイン
    安全性評価項目
        有害事象及び重篤な有害事象の発現割合、臨床検査値のベースラインからの変化量
    主要な有効性評価項目
        コホート1:SMN2遺伝子コピー数が2のⅠ型SMA患者
        18ヵ月齢時までの「30秒以上支えなしで座る」の運動マイルストーンを達成した患者の割合
        コホート2:SMN2遺伝子コピー数が3のⅡ型SMA患者
        24ヵ月齢時までの「3秒以上支えなしで立つ」の運動マイルストーンを達成した患者の割合
    副次的な有効性評価項目
        コホート1:SMN2遺伝子コピー数が2のⅠ型SMA患者
        14ヵ月齢時における永続的な呼吸補助※3を必要とせずに生存した患者の割合
        18ヵ月齢時までに、非経口又は機械的栄養補助を必要とせずに体重を3パーセンタイル以上に維持した患者の割合
        コホート2:SMN2遺伝子コピー数が3のⅡ型SMA患者
        24ヵ月齢時までに、「筋肉運動の協調とバランスを示しながら、5歩以上自力で歩行する」能力を達成した患者の割合

    ※ 3 :永続的な呼吸補助は、14日以上連続して16時間/日以上の呼吸補助(非侵襲的な呼吸補助を含み、可逆的な急性疾患及び周術期の呼吸補助を除く)を必要とする状態、と定義した。

    探索的評価項目
        コホート1:SMN2遺伝子コピー数が2のⅠ型SMA患者
        18ヵ月齢時までのCHOP-INTENDスコア40点以上、50点以上、58点以上を達成した患者の割合
        18ヵ月齢時までのBayleyスケール(第3版)の微細運動スコア及び粗大運動スコアで、15点以上改善した患者の割合等
        コホート2:SMN2遺伝子コピー数が3のⅡ型SMA患者
        24ヵ月齢時までのBayleyスケール(第3版)の微細運動スコア及び粗大運動スコアで、15点以上改善した患者の割合等
    判定基準
    解析計画
        解析は2つのコホート(コピー数2及びコピー数3)で別々に行う。試験全体の有意水準はそれぞれのコホートで保つようにする。
        コホート1:SMN2遺伝子コピー数が2の患者
        主要評価変数は生後18ヵ月までのいずれかの時点に、「30秒以上支えなしで座る」の運動マイルストーンの達成割合である。帰無仮説における運動マイルストーン達成割合を0.1%とし、正確な二項検定を実施する。有意水準は片側2.5%とする。主要評価変数が棄却された場合、副次的評価変数①生後14ヵ月時点での継続的な呼吸補助を必要としない生存率に対する検定を行う。対照群をヒストリカルコホート(PNCR)とし、Fisher’s正確検定を実施する。有意水準は両側5%とする。さらに棄却された場合、副次的評価変数②生後18ヵ月までのいずれかの時点で体重が3パーセンタイル以上維持する割合に対し検定を実施する。この時の帰無仮説は割合は0.1%とし正確二項検定を実施する。有意水準は片側2.5%とする。これらの検定は階層的に実施することにより第一種の過誤は保たれる。
        コホート2:SMN2遺伝子コピー数が3の患者
        主要評価変数は生後24ヵ月までのいずれかの時点に、「3秒以上支えなしで立つ」割合である。対照群をヒストリカルコホート(PNCR)とし、Fisher’s正確検定を実施する。有意水準は両側5%とする。主要評価変数が棄却された場合、副次的評価変数である「自力で歩行する」の割合に対しても同様に実施する。これらの検定は階層的に実施することにより第一種の過誤は保たれる。
        解析対象集団

    ※ 4 :コホート1の8例、コホート2の9例に加えて、「SMN2遺伝子コピー数が4のⅢ型SMA患者」1例を含む18例が安全性解析対象集団とされた。同群の結果は、便宜上コホート3として紹介する。

    患者背景

    (2019年3月8日カットオフ)

        データカットオフ時までに、コホート1に8例、コホート2に9例の患者が登録された。本試験はデータカットオフ時において継続中であり、観察期間はコホート1では1~8.7ヵ月、コホート2では12日~4.7ヵ月であった。患者の月齢(ゾルゲンスマ投与後の期間)はコホート1で1.7~9.1ヵ月齢、コホート2で24日~6ヵ月齢であった。
      2. 有効性
    1. ITT
      主要な評価項目
  • (2019年3月8日カットオフ)

        有効性について、データカットオフ時点までにコホート1及び2に登録された8例及び9例で得られた結果は、 以下のとおりであった。
        コホート1及び2に登録された17例中17例が永続的な呼吸補助を必要とせずに生存していた。
        運動マイルストーンについて、コホート1の8例中4例で「30秒以上支えなしで座る」 ※1が、8例中3例で 「10秒以上支えなしで座る」※2が可能となった。コホート2では、9例中4例で「頸定を保持する」※1が可能となった。

    ※ 1 :Bayleyスケール(第3版)を基に評価した。

    ※ 2 :WHO運動マイルストーンの動作基準を基に評価した。

      <参考>日本人における有効性
    1. ITT
      追加提出資料として求められたデータ
  • (2019年9月2日カットオフ)

        データカットオフ時点で、CL-304試験に登録された3例の日本人患者に本品が投与された。3例の有効性の結果を含む詳細(患者1及び2は生後9ヵ月まで、患者3は本品の投与後59日までの結果)は以下のとおりであった。
      3. 安全性
    1. 安全性解析対象集団
  • (2019年3月8日カットオフ)

        データカットオフ時において、安全性解析対象集団18例(コホート1:8例、コホート2:9例、コホート3:1例、 以下同順)のうち、有害事象は13例〔6例(75.0%)、6例(66.7%)、1例(100%)〕に認められた。2例以上で認められた有害事象は下表のとおりであり、うちコホート1では嘔吐2例(25.0%)、コホート2では肝機能検査値異常、胃食道逆流性疾患及び嘔吐〔2例(22.2%)、2例(22.2%)、1例(11.1%)〕は、ゾルゲンスマとの 因果関係が否定されなかった。
        重篤な有害事象は、3例(2例、1例、0例)に認められた。その内訳はコホート1では感染性クループ及び高カルシウム血症の各1例、コホート2では嗜眠の1例であり、いずれもゾルゲンスマとの因果関係は否定された。なお、死亡に至った有害事象は認められなかった。

    ※:新生仔マウスを対象とした単回投与毒性試験において、本品の投与に関連した心臓の病理組織学的変化が認められたことから、本品のヒトに 対する安全性情報が蓄積されるまでは、SMN2遺伝子のコピー数が4の発症前のⅢ型SMA患者は組入れないことが決定された。一方、SMN2遺伝子のコピー数が2又は3の発症前のⅠ又はⅡ型SMA患者については、発症した場合にⅢ型SMA患者より重症となることが予測されることから、治験実施計画書において心臓の安全性モニタリングをより厳密に確認することとした上で、登録が継続された。

        いずれかのコホートで2例以上に認められた有害事象
      <参考>日本人における安全性
    1. 安全性解析対象集団
      追加提出資料として求められたデータ
  • (2019年9月2日カットオフ)

        データカットオフ時点で、CL-304試験に登録された3例の日本人患者に本品が投与された。3例の安全性の詳細(患者1及び2は生後9ヵ月まで、患者3は本品の投与後59日までの結果)は下表のとおりであった。


      < 補足資料>運動マイルストーンの動作基準
      1. Bayley乳幼児発達検査(Bayleyスケール)(第3版)6)
        WHO運動マイルストーンの動作基準16)